情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 08 am <新しいインタフェースのモデル>
パトリック・ホイットニー 、イリノイ工科大学、米国

インタラクションデザインと企業戦略

近年、企業が製品、情報、サービスを作り出すことに関する知識は飛躍的に増大している。一方、ユーザーが新しい製品やサービスをどのように受け入れ、使いこなしていくのかに関する経営者の予測能力は低下している。この増大するギャップ「いかに作るかの知識の増大と、生活パターンについての知識の低下」は経営者にとって何を作ればよいかの判断を困難にさせている。

このような状況において、企業が、人々の生活のパターンを的確にそして詳細に理解するために、デザイナーはきわめて重要な役割を果たす。デザインのアウトプットによって、経営者は、複雑化する人々の生活に何を提供すべきかの判断が可能となる。特に、インタラクションデザイナーは大事な役割を担う。複雑化する生活や幅広いニーズに対応できるインタラクティブな製品の提案、インタラクションの理解、プロトタイピング、ユーザーの観察などは、企業がより的確な意思決定をするために必須の能力となる。

インタラクションデザインが従来の特化した領域から企業戦略レベルへとその役割を拡大した例として、1998年夏に香港で実施したインタラクティブホームのプロジェクトがある。イリノイ工科大学と香港理工科大学の学生チームが参加した。
家庭生活を中心に香港の文化特性を考慮し、なおかつ国際市場でも意味を持つ付加価値の高い製品とサービスの提言がプロジェクトの目標となった。10週間に渡る香港での生活観察を通じて、イノベーションのための9領域が設定された。その内の3つが、家族をつなぐためのシステム、両親と子供のための家庭教育の支援、生鮮食料品のショッピングシステムである。

Homebaseシステムは、現在の電話技術がもつコミュニケーションの負荷と断続性を克服し、移動通信による家族の定常的な結びつきを可能にする。それは、多様な幅をもったコミュニケーションを実現し、家族の多様な日常生活を自然な形でつなぎ、気軽にお互いが触れあうことを可能にする。

香港の家庭教育は、学校教育とは離れ、子供に対する詰め込み教育を行っているのが実態である。そこでは、年間1000億から2500億円が、参考書や塾に使われているといわれる。しかしその効用は決して高くない。香港の学生は、その後の実世界で詰め込まれた能力と知識をいかせないといわれている。Thinktankは、子供と両親を遠隔的につなぎ、同時に教育の内容と専門家のアドバイスを両親に提供するシステムである。家庭で宿題等をしてるときに子供に必要となる援助を、両親が遠隔的に行うことが可能になる。

Foodchainは、生鮮食料品の買い物を簡便化すること、そしてその支払と他の家計を統合するシステムである。買い物に時間を使うこと、荷物を持ち帰ること、これら二つの不便を解消するこのシステムは、各所に分散した店の生鮮食料を購買し、必要に応じて調理をしアパートのロビーまで届けてもらうサービスを提供する。

ここに示したイノベーションは、さまざまな度合いでインタラクティブなメディアや製品を構成要素としている。しかし、重要なことはこれらのイノベーションがユーザーの基本的ニーズから発しているということである。これは、企業にとって単にどのようにものを作るかだけではなく、日々の生活に何を提供すればよいかを理解することの重要性を示している。人々の生活を理解し、インタラクションの在り方を理解することが企業戦略の中核となりうるのである。



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