情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 08 pm <事例: 情報とインタフェース>
マリア・ジュディジ、HOT、米国

デザイナーの進化

グラフィック・デザイナーの役割はこの数世紀で確実に変わった。変化の原因はいろいろあるが、最も劇的な影響を及ぼしたのは、まぎれもなく、インターネットの普及である。インターネットそれ自体が新たなデザイン・メディアであるだけでなく、そのメディアを介して通信を行うための技術がデザイナーの役割を永遠に変えてしまったのだ。

デザインvs情報アーキテクチャ
現代のグラフィックデザイナーが実践する原則の大半は、19世紀ルネッサンスの芸術家であり同時に建築家(アーキテクト)である人物たちに端を発している。当時、工業社会の到来に伴って彼らは、機能面だけでなく、視覚的にも魅力に富んだ大規模な建築物を創り出さねばならなくなった。その結果、二つの専門分野が分化せざるを得なくなり、建築デザイン(意匠)の専門家と(機能面を技術的に扱う)建築家とが生まれることとなった。今日デザイナーが既に情報のアーキテクトと見なされるに至ったのか、それともデザイナーと建築家とはやはり明らかに異なる専門知識を備えた職業であるとして区別されるべきなのかについては、当然のことながら、いまだに議論の別れるところだ。

この議論を考察する際に興味深い視点がある。それは雑誌や新聞がどのように作られるかを検討してみることである。この場合、印刷物の内容を決定し、その情報の構成を決定する執筆者や編集者は明らかに情報の建築家・構築者と見なすことができる。一方、デザイナーは、ページに文章と写真とをどう配するかだけにその責任が限られており、記事の内容やメッセージについてフィードバックを行うこともなければ、それらの所有権を持っているわけでもない。前者と後者の間にははっきりと一線が画され、責任範囲も明確に異なる。

まさにインタラクティブなメディアであるインターネットでは、活字の場合と異なって、あるサイトの視聴者は前回とは異なるユニークな体験を手に入れることができる。このような視聴者に、ひとつのサイトで一貫性のある体験を提供しようとすれば、情報アーキテクチャとグラフィックデザインとの境界線は不明確にならざるをえないし、ひいては、その境界は消失することになる。サイト内の情報は、そのサイト内の異なった場所から簡単にアクセスできるように構成されなければならないが、それだけでなく、視覚的にも魅力的であり、理解しやすくデザインされていなければならないからだ。デザイナーと情報アーキテクトの双方が協力して、複雑な思考を扱いやすいコンテンツに分け、訪問者が完璧な情報へ容易にアクセスできるようにしなければならないのである。

時代に足並みを揃える
デザイナーの役割は変化した。良いデザイナーであるというだけではもはや十分ではない。今日のデザイナーはストラテジックな思考ができなければならない。デザイナーはクライアントの製品だけでなく、企業の使命やビジョンをいっそう明確に理解していなければならない。また、これらの核心となるメッセージを目標とする視聴者対し、適切なコンテクストの中で視覚的に表現することができなければならない。

現代のデザイナーは、昔なら難しいクライアントであると見なされたような人々と協力する方法を学ばなければならない。まず、デザイナーが制作のプロセスに可能な限りクライアントを巻き込み、クライアントが、そのプロジェクトが自分のものであると感じさせることがきわめて重要だ。さらに、プロジェクト・チームの各メンバーの専門知識と責任を把握しておくことも重要である。そうすることによって協力が促進され、すべてのメンバーが確実に共通のゴールを目指して働けるようになる。
今日のデザイナーは複数のメディア上でデザインしなければならないわけだが、これは理論上は難しく聞こえるが、実際的にはそれほど困難な問題ではない。インターネットはデザイナーの役割を大きく変えつつあると言えるだろうが、根本的なデザインのプロセスはウェブ上でも、伝統的なメディアにおいても同様なのだ。テクノロジーのおかげでデザイナーはよりいっそう革新的になることができ、自分のデザインするものに関してより大きな自由を得ることができる。しかし、デザインの本質は変わらない。

本当のマルチメディア・デザイナーになることを選んだ人々とは、デザインの次なる進化段階へと産業を導く人々なのである。



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