情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 09 am <情報の景観>
モデレーター: 水越伸、東京大学、日本

インターネットに代表されるデジタル情報技術が急速に社会に浸透しつつあります。とくにビジネス領域においては、より簡単で、より高速で、より便利なコミュニケーション活動がグローバルに実現しつつあります。しかし一方でデジタル情報技術の進展は、情報について富める者と貧しい者の違い、いわゆる「情報格差」の拡大を助長したり、アメリカナイゼーションとしてのグローバリゼーションを圧倒的なものにしたり、伝統的なメディア文化を喪失させたりといった数多くの問題も生みだしています。

こうした情報とメディアをめぐる問題は、たんに情報技術の進歩だけでは解決しません。問題を克服し、さらに新しいメディアの可能性を社会の中で実現していくためには、私たちが何らかのかたちで主体的に情報やメディアのあり方をデザインしていく必要があるのです。しかもそのデザインは、狭い意味でのデザイナーや専門家だけが行うのではなく、より広く市民が参画することが重要でしょう。それによって初めて、多様性と広がりのある情報様式やメディアの社会的なかたちが生み出されるからです。

しかしながらこのような実践は簡単には実現できません。現実の情報やメディアは、政治経済的、社会文化的な様々な要因と関係しながら存在していますし、よかれと思ってなされたデザインが必ずしも利用者にとっていいものだと限らないこともあります。
多くの情報デザインは、送り手の意図とは別のかたちで利用者によって解釈され、意味づけられています。いわば、情報デザインをめぐる解釈の闘争が起こっているのです。そうした社会的文脈の中で、情報やメディアのデザインはいかに可能なのでしょうか。
ここではこうした課題を具体的に考えるために、インターネットという新しいメディアを用いて魅力的な情報空間を生み出そう努力している2つのプロジェクトをめぐって報告をしてもらいます。

ひとつは仲俣暁生さんから、デジタル時代における本や雑誌の未来を考える「本とコンピュータ」オンライン版の活動について報告していただきます。さまざまなメディアの発達で情報があふれ変える社会においても、本や雑誌といった印刷メディアが培ってきた文化は、人類にとって重要な意味を持っています。しかしながら人々の活字メディア離れは世界的に進んでおり、出版産業の危機が叫ばれています。そうした中でサイバースペースに印刷メディアの文化を根付かせていくには、いかなるデザインが必要か。サイバースペースにおけるパブリッシングの可能性と課題についてお話をしていただきます。

もうひとつはマレーシアの関昭彦さんに、アジアにおける市民のコミュニケーション空間の構築を目指し、「アジア・チャンネル」などのネットワークプロジェクト、「モンジャ・キッズ」などのソフトウェア開発に取り組んでいる状況を報告していただきます。ここでもメディアや情報空間のデザインが、国境を越えた市民のコミュニケーションのあり方をいかに枠づけるか、逆に市民のコミュニケーションがメディアや情報空間のあり方をいかにデザインするかということが、大きなテーマとなっています。

ところでデザイナーの意図と社会の解釈の相互作用的な関係については、これまでもデザイン論の基本的な課題とされてきました。ヨアヒム・ミュラーさんからは、パブリック・デザインの領域におけるデザインと社会の関係性について、具体的な事例をあげつつ語っていただきます。すなわちミュラーさんが提示するデザイン論的な課題をプラットフォームとしつつ、その上で情報のデザインに関して、仲俣さん、関さんのプロジェクトが投げかける問題を考えていきたいと思っています。



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