情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 09 am <情報の景観>
仲俣暁生、本とコンピュータ、日本

オンライン雑誌編集の現場から

私は『季刊・本とコンピュータ』という雑誌の編集に、1997年の創刊から携わっています。この雑誌は、これまでの書籍や雑誌の出版・印刷にかかわってきた人たちと、電子出版やコンピュータ・ネットワークの世界で仕事をしている新しいタイプのメディア関係者とをつなぐ、議論の場として生まれました。制作は全面的に大日本印刷のバックアップによっていますが、編集に関しては完全にフリーハンドをもっています。創刊以来、毎号1万部以上が発行されており、ありがたいことに好評を得ています。

私は創刊以来、『季刊・本とコンピュータ』で「オンラインマガジンの勉強」という連載コーナーを担当し、欧米をはじめ、アジア各国などのオンライン雑誌の紹介と批評を行ってきました。1995年頃から日本でもインターネットの爆発的な普及が始まり、私たちが『季刊・本とコンピュータ』を創刊した97年には、かなりインターネットは大衆的なメディアとなっていました。ウェブサイト(ホームページ)による情報発信も、個人の手によるアマチュアリズムのサイトだけでなく、編集者、新聞記者、雑誌記者、そしてデザイナーといった、これまで本や雑誌、新聞などの紙のメディアづくりに関わってきたさまざまなプロフェッショナルが、インターネット上で新しいメディアにとりくみはじめていました。
そこで、私たちの雑誌でも、「紙とコンピュータの混淆メディア」であるこうしたオンラインマガジンに、注目してみようと思ったのです。

2年間で、8つのオンラインマガジンを紹介してきました。その中には、Hotwired、Salonといった、アメリカの有名なオンラインマガジンから、比較的知られていないヨーロッパやアジアの小さなオンラインマガジンまでが含まれています。そして、これらの比較検討の中からは、アメリカとヨーロッパ、そしてアジアのオンラインマガジンには、かなり際だった個性の違いがあることがわかってきました。それは、単にコンテンツの違いと言うだけでなく、むしろ編集手法や、情報ナビゲーションといった、メディアづくりの根幹に関わるところに存在しているのです。

こうした個性の違いは、かならずしもインターネットというメディアの登場によって生まれたのではなく、むしろ、それまでのメディア文化のなかにあった違いが、インターネット上にメディアにおいても引き継がれ、また顕在化しているように思えます。従来の紙のメディアは、多くの場合国境や言語圏、文化圏といったものに守られた閉じたサークルのなかで流通していたために、私たちはこうした違いに気づくことがまれでした。しかし、これからインターネット上でメディアを作ろうとするなら、こうした違いに無関心でいることはできません。今回のシンポジウムのテーマに引きつけて言うならば、ある種の「情報デザイン」について考えることが、ますます重要になってきたのです。

私たちは紙の雑誌の創刊に引き続き、98年からは日本語と英語のバイリンガルによる、オンラインジャーナル「本とコンピュータ」というウェブサイトを立ち上げ、変化する世界各国の出版文化についてレポートするとともに、さまざまな議論を国際的に積み上げてきました。

しかし、このオンラインマガジンを一年間続けてみた結果、私たちは、これまであった「雑誌」のスタイルをそのままHTMLで再現するだけでは意味がない、ということにも気づいたのです。
そこで、私たちは、オンラインジャーナル「本とコンピュータ」を、この秋から新しいフォーマットに変えようとしています。当日は、私たちがこのリニューアルにあたって考えたこともお話したいと思います。




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