情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 07 am <「ビジョンプラス」: そのチャレンジ>
ピーター・シムリンガー、 IIID ディレクター、 オーストリア

最初の「ビジョンプラス」シンポジウムは、1995年に情報デザイン国際研究所(IIID)が開催した「アドバンスト・スタディ・コース」の大事なイベントであった。現在は、もともとのアイデアであったIIIDの「ユニバーシティ・プロジェクト」の一部に位置付けられている。そのプロジェクトのひとつである「情報デザインのユニバーシティー(IDU)」(世界にネットワーク化された学びの場という意味でのユニバーシティー)は、ユネスコに公認されたIIIDの活動である。

さまざまなIIID活動の中でも、IDUは最も活気があり意欲的であり、かつ情報デザインに関する国際的な専門家ネットワークづくりのための、いろいろな関連プロジェクトに結びついている。

「ビジョンプラス」シンポジウムは、強い関心と批評眼をも合わせもった参加者を対象に、有望な専門家の実践と研究を発表する場である。今、必要なのは、ビジョンをもった専門家である。IIIDの目的は、「能力のプール」といってもいいような専門家のネットワークを少しづつ形成するため、そのような能力をもった専門的な個人を見い出し相互に結びつけていくことである。

そのためにわれわれは、生産と市場、消費者動向とライフスタイルの潮流をモニターする必要がある。われわれはまた、伝統と慣習における変わらぬ価値の特性を知っていなければならない。そして、次のような問いを持ち続けることも必要である。情報デザインは、いかにして、よりよい生活に貢献できるか。クライアントは、どのようなサービスを求めているか。われわれの仕事の価値を決定づけるのはどのようなコンテクストなのか。


情報デザインを考える上で重要なのは次の3点である。
1.情報デザインは、知識の移転のための有効な鍵になる。
2.活動に結びつく作業を促進するための知識の移転は、時系列の中で調整され適正化されることが必要である。
3.インタラクティブな情報のデザインは、知識の移転の最適化を保証する。

問題解決のために開発された「インタラクティブなマルティメディア」というコンセプトは、既存のデータを参照するという堅い枠組みの中にある。しかし、今、必要なのは、デザインそのももの再定義を導くような、より広いそして柔らかいアプローチなのではないだろうか。
「問題解決」と呼ばれる方法は、必要に向けて創造的にアイデアを前に投げていくようなかたちをとる「デザイン」のプロセスとは対照的である。私たちは、全ての思考をカバーするという意味で「問題解決」という用語を使うことを今すぐにやめなければならない。なぜならば、その言葉は、私たちを、ひとつの小さな思考の部分に閉じ込めてしまうからである。」(エドワード・デ・ボノ)

仕事の中に同定される「問題」だけでなく、活動に結びついた作業をしている人々のさまざまな「ニーズ」に対して目を向けることがたいへんに重要である。

そのニーズが資源となって「コミュニティーのデザイン」の質を決定するはずである。これを考えるならば、「ビジョンプラス7」は、これまでに開催されてきたIIIDのシンポジウムの中で、その主旨に最もふさわしいものになるかもしれない。東京で開催されることもたいへんに嬉しいことである。興味深い場所と興味深い実践と研究をしている発表者達そして聴衆の方々が、「ビジョンプラス7」を貴重な集まりにしてくれるはずである。それは、東西に橋をかけ、地域と同時に広く世界にも目を向け、コミュニケーションするコミュニティーというコンセプトづくりに結びつくことを可能にするに違いない。

また、この催し支えてくれているユネスコをはじめ多くの団体機関や企業にこの場をかりて心よりの感謝の辞をのべさせていただきたい。



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