情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 08 am <新しいインタフェースのモデル>
モデレーター: 須永剛司 、多摩美術大学、日本

情報デザインの会議が開かれる。そのことは、情報デザインという専門的な領域が既に存在するかのように、われわれを錯覚させてしまう。しかし、今、その問題領域と解を求めるための知識や技術が明らかにされているとはいえない。
情報のデザインは、何を問題として捉え、その問題をどのように扱い、どのようにその解を求めるのだろうか。そして、そのデザインからわれわれの社会と個々人が、どのような価値を手に入れるのだろうか。 
情報デザインとは、人々が触れる情報の道具と環境を形づくる分野であると言っていい。そこでは、コンピュータと通信ネットワークの技術が実現している「はたらき」に着目し、ダイナミックにやりとりされるメッセージの「形」を問題にしている。

メッセージの「形」とは、情報を扱う人々にとって、それがどのように振る舞うのか、その見え、つまりインタフェースだ。キーボードとマウスとモニターによって構成される、ハードウエアの「形」、また、スクリーンに表示されるグラフィクスとしての、ソフトウエアの「形」を規定するのが、インタフェースのモデルだと言える。

コンピュータ・ハードウエアの基本型は、キーボードとモニターの構成である。パーソナル・コンピュータとして普及しているデスクトップ型のものは、タイプライターとテレビの「形」をモデルに生まれたと言われている。その後、ラップトップ型、手帳型、そしてモバイル型と呼ばれるさまざまの「形」が生まれている。それら新しい形は、何をモデルにデザインされているのだろう。人々が親しんできた「手帳」や「電話機」かもしれない。
コンピュータ・ソフトウエアに「形」という概念が本格的に登場するのは1980年代である。ゼロックス社のスター・コンピュータ、続くアップル社のマッキントッシュには「デスクトップ・メタファー」という形が与えられた。それは、仕事場で紙に文字を書く作業の状況を図式にして、スクリーン上に表現したものだ。コンピュータのユーザーがその図式、つまり「形」を取り扱うことで、ソフトウエアを操作することができるようになったのである。この意味でもソフトウエアの「形」は、現実世界を写した「絵」のモデルによってデザインされているものだと言える。
コンピュータは、机を離れて、浮遊し、移動を前提とする道具に広がっている。そこにはペン入力や音声入出力という「はたらき」も実装されている。計算の機械から文字を書き、表を扱う道具へ、そして、映像や音楽などマルチメディアを扱う道具に、また、電子メイルやWWWなど新たなコミュニケーションの道具になろうとしている。

しかし、これらの情報の道具と環境が、人々や組織にとって分かりやすく使いやすいものになっているかと問えば、YESとは答えられない状況にあると思う。その理由のひとつが、新しいインタフェースのモデルの不在にあるのだ。新しい形をつくるための新しいモデルを求める論拠はどこにあるのだろうか。
私たちのつくっている社会や組織に、私たち自身の行為に、そしてそこに生まれる私たちの思考と認識に、モデルをつくり出す多くのヒントが隠されているはずだ。そう、仕事場の姿がデスクトップ・メタファーになったように。

このセッションでは、インタフェースのモデルづくりの話を聴きたいと思う。どうやってモデルを立てて、どうやってデザインを仕立て上げているのか。そして、どんなモデルが、どんなデザインが、ユーザーにとってどのようにうまく行かないのだろうか。

ヒューマン・コンピュータ・インタラクションHCI領域を築いているウィノグラドがその著書で、コンピュータを使う現場におけるブレイクダウン(ちょっとしたミスや重大な事故)をとおして、はじめて、本当に存在している人間の意図と行動のモデルが、対象と属性のネットーワークとして見えるはずだ、と述べている。

大学で企業でそして研究機関での実践の中にあるそれぞれの格闘を紹介し、新たなモデルづくりの可能性を展望するのがこのセッションのねらいである。



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