情報デザインからコミュニティーの構築を考える
情報デザイン国際会議・ビジョンプラス7
Tokyo, 1999, october 07 - 09


10 09 pm <関係のマッピング>
若林幹夫、筑波大学、日本

共に在る形 コミュニケーションとコミュニティー

この報告で私は、社会において人々がともに在る関係の形という点から、情報のデザインについて考察を試みる。そこでは、地図というメディアが一方ではメタファーとして、他方ではまた実際に人々が共に在る形を成型する装置として、重要な役割を果たすことになるだろう。
社会とは、複数の人々が、他の人間や生物、想像上の存在をも含むさまざまな事物と共に在る関係の広がりである。この関係の広がりの全体を、個 々の人々は直接に経験することができない。人々は、そのような社会の全域的な広がりを地図のような表象や、神話やニュースのような言説等を通じてのみ了解し、他者たちと共有することが出来る。それは、次の三つのことを意味している。第一に、私たちにとって社会や世界の全域的な広がりは「情報」という形でしか到達不可能な領域であること。そして第二には、そのような社会の全域的な広がりに関する情報を生産・流通させ、共有させるシステムが社会の中には存在していること。そして第三には、したがって社会という関係の広がりは、身体や事物の物理的な関係の広がりであるだけでなく、共に在ることに関する情報を生産し、流通させ、共有する、身体と事物の間の情報の関係の場でもあること。

地図というメディアは、そのような共に在る形を表象し、他者と共有させ、身体と事物の間に情報の関係の場を作り出すメディアの典型である。人間の長い歴史のなかで、さまざまな種類の地図が、異なる仕方で世界の全域的な形を表象し、異なる形の共に在る形を作り出してきた。神話的な表象に満ちた古代や中世の世界図と、今日の「科学的」 な地図とでは、異なる世界、異なる共に在る形を示している。また、同じ社会の中でも世界地図を見るときと道路地図を見るときでは、人は異なる在り方をする広がりとして世界を見出している。それは、地図というメディアが単なる表象であるのではなく、それを通じて人々が特定の関係の広がりとして世界を見出し、ある関係の形を作り出しすらする社会的な装置でもあるということだ。

共に在る形を作り出すこうした装置は、地図だけではない。私たちを取り巻くさまざまな記号や表象、イメージと、それらの生産・流通・共有のシステムが、私たちの世界に対する想像力を捉え、成型し、人々が共に在ることの形を作り上げている。建築空間や都市空間にも、田園風景や自然環境の中にすら、私たちはさまざまな「共に在ること」の記号や表象、イメージを見出すことが出来るのである。私たちの世界はさまざまな「地図的なもの」に満ちており、私たちはそうした「地図」を参照しながら他者たちと共に生きる世界をつくりだしている。
このように考えるならば、「社会を読み解くこと」としての社会学と、「情報環境をデザインすること」としての情報デザインとは、思いのほか近い場所にあることがわかるだろう。
そうした「読解」と「デザイン」の接点を、具体的な事例やトピックの中に探ることを、当日の課題としたいと思う。





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